VOICE of PR Planner (2013年8・9月)
文化施設だからこそ
東京国立近代美術館 工芸課
研究補佐員
稗田 竜子
1回休み、の間にバトンを受け取りました稗田 竜子です。(株)セレスポの越川さんからは過分に素敵な紹介をしていただいて緊張しておりますが、どうかバトンを落としませんように。 そんな越川さんをはじめとするPRパーソンとの出会いをうれしい誤算と言ったら、失礼にあたるでしょうか。映画配給宣伝会社を経て東京国立近代美術館に勤務、新設のほぼ独りの工芸課広報ということになる私には貴重なつながりにも係わらず、実のところ、取得後に誰かと知り合えたり、交流会で意気投合できたりするかもしれないと思ってもいなかったのです。「PRは何か」「広報と広告の違い」を説明せずに語れることがこんなに心地いい関係なんてちっとも知りませ んでした。そのくらいに5年前の私の周囲では広報・PRという観念がなかったということなのですが。 いわゆるアートは一部の特別な人を除けば、生きていくのになくてはならないもの、ではありません。それでも評価し残すことが求められ、時代の空気を映す文化と一時的な熱狂・流行とを区別することを求められるもの、求められているはずのものです。少なくともアートミュージアム(美術館)ではそうした自負で、展覧会を考える際に「集客できる作家ではなく、紹介する価値のある作家」という表現も使われます。そんな命題を負う文化施設だからこそ、自身の広報・PRにも同様の目線から、パブリックリレーションズを築けるようでなくてはと考えています。 現職は、学芸員のアシスタントとして、展覧会の広報を中心に接客から時には展示の企画、作品の取り扱いにも従事しますが、大学での専攻は法学と美術からほど遠く、学芸員資格は持っておりません。「学芸員」の仕事に「学芸員資格」もなくてはならないものではないのです。とはいえ、仕事を任せられるまでには代わりに時間とチャンスが必要です。当館は大きく美術、工芸、映画の三つに分かれた学芸部門、そして事務部門があり、広報は各学芸課の所属になります。つまりただでさえ、一つの美術館でありながら広報が分散し、お互いがある種ライバルのような、広報同士の連携の取りにくさや全体を見渡す担当の不在が大きく引っかかっていました。体系立てて勉強したこと、理論的裏付け、いろいろなケーススタディ、それらを周囲に速やかに納得してもらうため、インナーコミュニケーションのため、それが受験動機でした。「広報」の仕事には「PRプランナー資格」を利用することにしたわけですが、大いに有効だったことは強調してお きます。うれしい誤算も含めて、受験はもちろん大正解でした。 その一方で、PRプランナー資格試験自体の存在や価値が少しずつ変わっていくのを望んでもいます。受験まで至らなくても、職業に選ばなくても、それ以上に多くの人がパブリックリレーションズの何たるかは理解しているというように、その一助を担えればこんなにうれしいことはありません。 これからもあるに違いない新しい出会いのみならず、PRプランナー資格は旧交を温めるのにも一役買ってくれました。これも何かのご縁、次はピーアールコンビナート(株)の蜷川昭文さんへお願いしようと思います。