VOICE of PR Planner (2014年1月)

広告に頼らない「効果的マーケティングPR」  

(株)JALUX

増茂 洋

  (はじめに) 「飲み会」繋がりで日本郵政のワインフリークな和田さんよりバトンを受けましたJALUX(ジャルックス)の増茂です。格闘技フリークとの紹介を頂きましたが、趣味として少林寺拳法を20年程続けています。肝心な広報暦は弊社上場(2002年)以来なので、かれこれ10年強選手となりますでしょうか。現在は、IRや株主総会運営を主な業務としており、東証適時開示に向けた数字分析や公文書作成などと格闘しておりPRとはやや異なる業務を担っています。普段の業務が硬派なこともあり、今回勝手ながら気軽にPRについての経験談等書きたいと思います。 (PR駆け出し時代) 弊社IPO時(2002年)、某航空会社で勤務していましたが、「広報:PRが必要だ」ということで弊社の広報関連部署への異動が決まり、“What’s PR?”といった状態からのスタートでした(当時プランナー資格があればイロハは知識として備えられたのでしょうけど……)。2001年社名変更(日航商事→JALUX)、2002年IPO等が重なり社名認知度向上が一つのミッションであったかと思います。 「一体何をパブリックにアピールすればよいか?」、IPO当時の中期計画や上場目論見書を熟読する中で考えていました。業績や事業のネタ提供も大事ですが、単なる会社紹介になるしニュース性も乏しい……ならばもう少し身近ネタのほうがわかりやすいかと思い、幅広い事業の中で一つの強みである「空港関連」に絞ってみよう!と思ったのが自分にとり本格PR活動の始まりでした。 記者クラブにも属さず記者とのコンタクト方法も判らずの状態であったので、知人の広報マンからの紹介による記者との接触からがスタートでした。記者を紹介いただいたところでネタが無ければ発展しない。何か刺さるネタはないかと空港での新商品(弁当)をネタに色々熱く語りました。商品特徴に加え「駅弁」のように空港でのお弁当もありじゃないかなどと当時の某経済新聞記者に話したところ、かなり反応がよく「これ面白いですよ!」と始まったのが「空弁」誕生の起源です。 それから現場取材により記事化されたのを契機に多くのメディアからの取材が入ってきました。状況を先の記者に相談したところ、「すべての取材に応じてください」との助言をいただき、別件リリース取材に加え対応はかなりタフでしたが、おかげをもって約1年であらゆるメディア対応を経験することができました。メディアに露出されていく段階で「空港弁当」が「空港弁」や「空弁」になり、すっかり一般用語の「空弁」となりましたが、やはり「駅弁」ありきの「空弁」がいい形で育っていったのだと思います。 (PRが創造するマーケット:パブリシティ効果) 先述の「仕掛け」から露出が増えると取材もそれに乗じて増えるのですが、広告のセールスも増えました。広告効果もあるとは思いますが、PRに徹し広告以上の効果を図れる実感(自信)もあり広告には頼りませんでした。現場協力のもと、リリースは新商品が出る度に作成し常時新情報の発信に努め、取材は他社広報との連携をとるなどし露出が多くなるにつれ売上増にも繋がってまいりました。メディアも新聞から雑誌/Web、そしてラジオ・TV・一部海外へと広がり、さらに地方紙にも多くの露出が図られ、気づいたら全国レベルの??億円規模の「空弁」マーケットが創造されていました。地域(空港)によっては、お弁当は幅広く展開しており既存マーケットであったかもしれませんが、「空弁」が全国規模となったのはPR効果として大きな価値だと思います。 自社商品だけのヒットを狙うのではなく、「空弁」というカテゴリーブランド及びマーケット創造には、自社・他社・メディア・お客様の皆の価値が合致する点が大きいと思います。ブームは一時で消えるかもしれませんが、10年経った現在でも「空弁」取材は続いています。パブリシティが生んだマーケットといっても過言ではありません。弊社においては「空弁」製造の合弁会社を昨年開業し、現在多くの空弁が誕生しています。空港に来て「空弁」を購入することを空港に行く楽しみにしてくれる人も増えていると聞きます。「空弁」マーケット創造は、最初からこうしようと言うより気付いたらこうなっていたという感じでもあり、冒頭の「仕掛け」というのは結果論から来る言葉かもしれません。 (PRプランナーの活かし方) PRプランナー資格取得は、資格誕生から何人かのPRパーソンが取得した話を聞き、自分も取ろうかな的な動機でした。実技を兼ねた3次試験と面接まで時間のかかる資格だなぁと思いながら参考文献を自費で購入し「落ちたら損だ」というマインドで臨み、実技ではPPTがあるので、これも自費でPPTの一日研修を受け何とか乗り切った感じです。広報関連の知識や実務(リリース・企画)はいい形で学ぶことができ活かしています。あとは皆と同じ有資格者同士のネットワーク作りですかね。 PRプランナーの皆さんは、PRという仕事柄夫々が自社の強みやノウハウをご存知だと思います。一社ではできないけど一緒ならできることはPRパーソン同士だからこそ実現可能になるものもあると思います。これだけ多くのプランナー(1,534名/2014年1月時点)がいるのですから、セオリー通りに行かずともネットワークを活かして何か新たな展開ができるはず、そうしたことが実現して初めてプランナー資格も世間に通じてくる(バリューアップする)のではないでしょうか。PRプランナー交流会もそうした観点から参加するとより意義が深まるものと思います。 (最後に) 「空弁」マーケット創造は話せば長いストーリーですが、社内関係者をはじめ、他社広報、メディア、お客様との一体感があってこその実現だと思います。当初のミッションであった社名認知度向上からはやや離れた結果となりましたが、「マーケティングPR」としていい経験ができたものと思います。 最後に、空港に行かれる際にはぜひ「空弁」をご賞味くださいませ。この場(PRSJ  NEWS)も貴重なPRの場として活用させていただきます。長々としましたが拙い話にお付き合いいただき、ありがとうございました。 2014年、皆様にとり、よき一年になりますように! 次回は、ランナーでありパン作り名人でもあるプランタン銀座のPRウーマン飯塚さんにバトンタッチいたします。