VOICE of PR Planner (2015年4月)

私にとって「お守り」みたいな資格です。  

パナホーム(株)

寺谷 信弥

  弊社 環境部の山田欽也さんからバトンを引き継ぎました。パナホームの寺谷信弥と申します。 私は新卒で今の会社の宣伝部門に入り、宣伝制作の仕事を5年間担当。その後6年目から現在までの27年間、首都圏の営業部門でエリアの広報宣伝業務を担当しています。企業の話題や情報をタイムリーに真摯に伝える「広報」と、時間や紙面、空間を買ってあの手この手で目立とうとする「宣伝」。考え方も手段も違うし、ときには相容れないところもありますが、私にとっては両方が自分の仕事です。「PR」という目的はどちらも同じですしどちらの仕事も好きなので、双方のよい部分が両立した仕事はきっとできると思ってやっています。 広報や宣伝の分野には専門資格というものがありません。勘とセンスと能力があれば誰でもできます。建築の世界のように、広報士とか宣伝士のような資格制度があれば、プロになろうとする励みになるし、それを目指して頑張れるのに、と思っていたところ、6年前にPRプランナーという資格制度が始まるという記事を新聞で目にしました。こんなことは広報宣伝の分野で初めてです。さっそく課題図書を取り寄せて第3回目の時に挑戦したのですが、苦手な時事問題で失敗。次は何とか時事をやっつけようと「現代用語の基礎知識」を買い、分厚いので5つに切り分け、1冊ずつ通勤途中に読みました。あまりにも情報量が多く、読んだあとから忘れていくのであまりいい方法ではありませんでしたが、それでも気休めにはなったようで、次の回で何とか 合格できました。もともと広報と宣伝の担当だったので、その後の仕事が大きく変わったということはありませんが、PRの仕事をする際の気持ちや心構えは少しずつ変わっていったと思います。そして合格から1年後に忘れられない出来事が起きました。東北大震災です。 当時私は東京支社の宣伝企画を担当しており、営業にとって大事な商戦となるGWの宣伝企画を考えていた時でした。ほとんどのメディアで宣伝が自粛となり、1週間たっても2週間たってもいっこうに出口が見えません。無力さを感じつつも、何か方法はないかと悩みました。 世の中には「がんばれ、日本」という言葉があふれていました。それ に「家」をつける、というアイデアが浮かびました。「がんばれ!日本の家」。誰もが地震と隣り合わせで生きなければならないこの国で、安心できる家を提供することが私たち住宅会社の責務です。だから、その技術でこれからもっともっと日本のための家づくりをがんばります、という意味です。自らを奮起させる内なる言葉とも、社会からの応援の声とも、両方とれるメッセージです。 また、「日本の家」は、弊社の経営ビジョンにもある言葉なので社内の理解も早いと思いました。しかしそれをどう表現するかが難しい。東京単独の企画なので広報的な動きもできず、業界全体が自粛しているなかで宣伝もできません。休日に悶々と湯船に浸かっていたときに突然浮かんだのは、当時流行っていた書道ガールズでした。 元旦の朝のテレビ番組で、彼女たちのパフォーマンスに毎年元気をもらっていたのですが、その年に東京から初出場した高校があったのを思い出したのです。さっそくアポをとって訪ねたのですが、その日は春休みに入る前日でぎりぎりセーフ。校長先生と書道部の先生に会いました。民間企業のお願いにもかかわらず快諾してくれた先生。なにより、春休み返上でがんばるといってくれた生徒たちに感激しました。余震と放射線の影響でどこにも撮影場所がなく困りましたが、最後にダメモトであたった同じグループのパナソニックセンターが、余震で休業中のスタジオを特別に開けてくれました。 練習から本番撮影まで5日間。彼女たちの動画に会社のメッセージを添えて、何とかGWからの営業活動のきっかけをつくることができました。やっている最中は無我夢中で分かりませんでしたが、いまあらためて見てみると広報とも宣伝ともつかない内容になっていて、そんな表現もやればできるのだと思いました。 4年経った今もその時のサイトはなかなか消せず、実はこっそり残しています。ご興味があればご覧ください。http://www.panahome.jp/ganbare/ 名刺に小さく資格名を入れています。名刺交換の際に「これはどんな資格ですか?」と聞かれて説明するときに何だか専門家になった気分がしますし、CMの制作現場で実力のあるディレクターやデザイナー、コピーライターと接する時でも気後れしないようになりました。たまに同じ資格を持った人と 会った時には特別な親近感がわきます。認定カードはいつも財布に入っています。出すチャンスはほとんどないのですが、この資格は広報や宣伝に関わる人にとって、自分自身を励ましてくれる「お守り」みたいな力があると思っています。 最後に、しばらく住宅業界関係者が続きましたので、そろそろ別の業界へバトンタッチしたいと思います。同じパナソニックグループで広報を担当している稲田さん、よろしくお願い致します。